全体講評会にむけて

課題文:
芸大構内・周辺(半径1Km程度)からある場所を選び、その場所が連続していると考えられる範囲を記述・表記してください。
その連続性(同一性)を記述・表記を用いて説明して下さい。

場所と空間「場所を記し映す」  前期学部全体講評会 7月14日(木) 11:20~ @FM です。

全体講評会のプレゼンテーションのポイントを記します。
全員で一つの課題に取り組みましたが、各自の問題設定が異なりますので、「記述・表記を用いてる場所の連続性(同一性)を示しなさい」という課題に対し

  1. 自分の取り組む問題として何を設定したか
  2. その問題をどうやって解いたか(解こうとしたか)
  3. どの場所を選んだのか、なぜ選んだのか、考察・試行の結果はどうだったのか

を明確に話せるとわかりやすく伝わるように思います。下に上記の1,2に各プロジェクトをあてはめたものを想像してみました。課題としては割と難しいことをやっていますので、言葉に置き換えるのが困難な場合もあると思います。私の理解や把握がズレているかもしれませんが、参考にしてください。使用している言葉がしっくりこない場合も多いかと思いますので、各自自分の言葉に置き換えるなど、以降はそれぞれの解釈に委ねます。

  • 信号の連続した変化により移り変わる連続性をもつ中央交差点の範囲
    1. 問題設定: 青信号による心理的連続感が、その場所の連続性(同一性)を随時変化させていると見立て、それを構造的に捉える方法を考える
    2. 試行解法: 信号シグナルの連続する周期や時間的長さのマップを作り、場所の連続性(同一性)の変化を見出す
  • ファサードマップ
    1. 問題設定: 建物の連続する都市空間においては、建物のファサードによってその場所の印象が左右されると見立て、ファサードの変化を俯瞰的に捉える方法を考える
    2. 試行解法: ファサードを地図的視点で一覧できる表記方法によってマップを作り、場所の連続性(同一性)を見出す
  • 変動する谷中銀座
    1. 問題設定: 商店街の”らしさ”を、店舗の複合した特徴の分布によって捉える方法を考える
    2. 試行解法: 谷中銀座を構成する店舗の年齢(古い・新しい)と、それぞれの地元利用者/観光客利用者の割合を調べ、2要素のバランスを一覧できるマップを作り、場所の”らしさ”の連続性(同一性)を見出す
  • 道の見えかたの考察
    1. 問題設定: 歩行者の感じる空間の変化を、”量の変化”として捉える方法を考える
    2. 試行解法: 歩行者視点を基点として視界内のすべての対象物までの距離を記録し、その距離(”量”)の分布を統計的に分析して、歩行通過する場所の連続性(同一性)を見出す
  • 安心して根津へ行きたい!
    1. 問題設定: 都市の2点間の移動に使われる経路を、自動車の往来から守られている度合いによって、構造的に分類する方法を考える
    2. 試行解法: 芸大正門から根津駅へ向かう全通りの経路を、防護柵、道幅、交通量の3つの指標で測り、3要素の分布をマッピングして、経路のもつ場所の連続性(同一性)を見出す
  • 木と木と木
    1. 問題設定: 木々の間で感じる心地よい場所が、どのような配置構造から成り立っているか、を把握する方法を考える
    2. 試行解法: 木の密度や最近2点間距離を測って各指標のヒートマップを作り、心地よい場所の連続性(同一性)を見出す

↓続く作品は残念ながら全体講評会で発表時間が割り当てられませんが、同じ構造で整理してみました。参考までに。因みに選抜は作品の良し悪しできまっているというよりは、バリエーションや作品どうしのバランスなどから決まりました。市川としてはすべて発表してもらいたいのですが、講評会の時間枠が限られているのでやむを得ない選抜と考えてください。全体講評に出ない作品にも非常に面白いと感じている作品がたくさんあります。

  • 坂道は連続しています。
    1. 問題設定: 視覚的に連続している道は、見る方向と勾配に因っているという見立てから、道路勾配の変化や分布を俯瞰する方法を考える
    2. 試行解法: 勾配(角度)を計測し地図上に勾配のヒートマップを作り、場所の連続性(同一性)を見出す
  • ヒマラヤ杉を見る
    1. 問題設定: ランドマークの可視性が場所を連続させているという見立てから、可視性の分布を表記する方法を考える
    2. 試行解法: 任意の地点からヒマラヤ杉を向いた際に視界に占める割合を測り、可視度のヒートマップを作り、場所の連続性(同一性)を見出す
  • 開ヘイ路
    1. 問題設定: 道路と敷地、敷地どうしを隔てる”塀”が、場所の連続感を左右しているという見立てから、塀の分布を俯瞰する方法を考える
    2. 試行解法: 塀を高さと種類(透過性)によって分類し、その分布を地図上にプロットし、場所の開かれ度≒連続性(同一性)を見出す
  • 未場所
    1. 問題設定: 人が座るように公園計画された場所以外に、人が佇む場所(未場所)には何らかの構造的特徴があるという見立てから、その場所を抽出する方法を考える
    2. 試行解法: 佇んでいる人の場所を15分おきに記録し、それぞれの人の占有範囲を重ね、人が佇む魅力をもつ場所の連続性(同一性)を見出す
  • 水面からみつめる世界
    1. 問題設定: 水面への映り込みの像から水辺の街並みを抽象化して捉えられるという見立てから、場所の連続性を抽象的なパターンとして捉える方法を考える
    2. 試行解法: 映り込みを昼夜にわたって撮影し、水面というフィルターによって抽象化されたパターンを分析して、場所の連続性(同一性)を見出す
  • Continuous Roof
    1. 問題設定: 建築物として計画されている・いないにかかわらず、傘をささずとも雨に濡れずに移動できる範囲が1つの連続性であると見立て、実際の範囲を調査する
    2. 試行解法: 上野駅を起点とし、屋根が連続してる範囲を実地調査し、その範囲を地図上にプロットする
  • Sunday of Someday
    1. 問題設定: ある場所において、その場の人々の意識が向けられる施設の商圏域は刻々と変化すると見立て、その時系変化の表記を考える
    2. 試行解法: 上野公園内のスターバックス、パークサイドカフェ、都立美術館の時間帯別混雑度の統計データを用い、各店舗・施設を母点とした重み付きヴォロノイ図によって商圏域の連続性の変化を表記する
  • けものみち
    1. 問題設定: 歩行路として計画されていない場所に残る通過跡から、実際的な通行経路を推察できると見立て、実際の通行路を再構成する方法を考える
    2. 試行解法: 上野公園内にけものみちのように残る跡を観察記録し、実際的な人の動きを推察しながら、場所の連続性(同一性)を見出す
  • 路地
    1. 問題設定: 路地における連続性(同一性)を各建物から飛び出している要素の類似度によって、抽出する方法を考える
    2. 試行解法: 建物からの飛び出し要素を分類し、それらの有り/無しを各戸について調査し、類似度を数理的に分析する(バイナリー距離、クラスタリング)

 

講評後

講評を終えて、気になったこと、伝えそびれた事を書きます。先生方、クリティックの方々の意見と反するところもありますので、あくまで市川個人の意見として読んでください。

  • 講評会で述べられた意見は、絶対的なものではありません。講師やクリティックの方々はそれぞれ異なった考え方や価値観を持っています。すばらしい実績やキャリアを持っている方ばかりですから、各々の経験に基づいた貴重で有用な意見であることは間違いありません。でもそれらが必ずしも正しいとは限りません。「正しさ」も誰にとって、何にとって正しいのか、という議論も常に存在します。意見の多様性に触れること、が講評会という場が設けられる重要な理由のひとつだと思っています。
  • 全体講評会へのセレクションの有無に関わらず、講評が終わっても、自分の作品として修正したり、ブラッシュアップして記録してください。何人かは全体講評会で再度プレゼンテーションしてもらうことになります。
  • データソース(取得元)については、足で稼いだり、自分で調査したものが、必ずしもgoogleや他の公開されている統計データより、価値のあるもの、とは思いません。質によります。いくら足を運んで積み上げても、公開されているデータと同じものしか取れないのであれば、あるいは公開データよりも情報量がすくないのであれば、その価値は疑わしいでしょう。公開されていない、容易に取得できないユニークな種類の情報である場合にようやくその価値が見出されるのではないでしょうか。ただし、もし公開情報などから容易にデータが取得できた場合、データ入手・整備の時間労力が大幅に短縮できるわけですから、そのアドヴァンスを生かして、他の部分でのリードが無いとバランスが悪く見えてしまうことは自明ですね。
  • 調査や分析にスペクタキュラーな・びっくりするような結果、ばかりを求めるのは危険です。そのような結果がスキルやアイディアだけによって導かれる訳では無いからです。スペクタキュラーな結果を導出するためにデータを捏造したり評価を捻じ曲げては、そもそもの意味を失ってしまいます。研究の分野でも捏造事件がたくさんありますね。もっとも悪い行為であることはわかっていても、そのような間違った方向に行きやすいことも確かです。スペクタキュラな結果をあらかじめ想定すると、陥りやすいのではないでしょうか。
    びっくりするような結果が出れば、もちろん面白い分析として評価されるでしょう。でも「そうなればラッキー」程度に認識してください。「当たり前の結果が出てつまらない」ということは良くあると思います。ですが、「当たり前のこと」「直感と相違ないこと」が、どのような要素でなりたっているか、ということを「定量的に」「客観的に」説明できることは、大変価値のあることです。その「当たり前のこと」を成り立たせている要素をコントロールすることで、「当たり前のこと」「当たり前でないこと」を、計画者・設計者の立場から再現できる(コントロールできる)可能性があるからです。

講評会について

初めての講評会ということで、形式や勝手がわからないかもしれません。基本的な流れは

  • 持ち時間(5分程度、詳細松田さんより指示あり)内に提出物を用いて説明する
  • クリティック(ゲストや講師、担当教官)からコメントをもらう、あるいは質疑応答する

というやり取りの繰り返しになります。講評会は押しなべて割り当て時間が短いので、できるだけポイントを絞って簡潔に。今回の課題の説明のポイントとしては

  1. どの場所を選んだのか
  2. なぜ選んだのか(場に行ったときの感触や体験から、でもよいし、何らかの見立てや予測があったのならばそれについて、でもよいです)
  3. xxの基準において、xxの見方において、この場所はここからここまで(範囲)と考えました(結果、結論)
  4. その場所の範囲をどのように抽出したのか、その調査方法や場所の範囲を読み取ることのできた表記方法について(詳細説明)

を明確に伝えてください。

 

講評会ゲストクリティック

次回4月27日(水) 場所課題「場所を記し映す」 提出 + 講評会 講評者ゲストを予定しております。

新井崇俊(アライタカトシ)さん

工学博士、東京大学生産技術研究所特任助教、都市研究室 hclab.コアメンバー

鳴川肇(ナルカワハジメ) さん

慶應義塾大学環境情報学部准教授オーサグラフ開発者

國廣純子(クニヒロジュンコ)さん

青梅市タウンマネージャー、都市研究室 hclab.コアメンバー

2016 課題 「場所を記し写す」

場所を記し写す

芸大構内・周辺(半径1Km程度)からある場所を選び、その場所が連続していると考えられる範囲を記述・表記してください。その連続性(同一性)を記述・表記を用いて説明して下さい。

提出物: A0平面 x 1枚 (A3 x 8) 手書き、CAD、グラフィックエディタ、出力方法不問

建築は全てをひとりで行うことも出来ますが、多くの場合複数の人が関わって作り上げます。計画から建設に至ってたくさんの情報を伝え合わなければなりません。その為にも建築には特有の記し方があり、建築を検討したり設計するのに便利に工夫されています。今後たくさんの設計課題を通じて習得していくでしょう。
一方建築設計の独創性は、ユニークなものの見方、捉え方から発することもすくなくありません。自分なりの感じ方、見方を大切にし、その記述・記録方法を模索していきましょう。自分の物差しを育てること、その物差しが他者と共有・共感できるような互換性をもっていることを期待します。
建築を考える出発点となる「場所」にはさまざまな情報があります。長さや時間あるいは数値化できないものかもしれません。一般的な建築の記述方法にとらわれず、何をどのように測るか、どのように記録・記述できるかをこの課題で考えていきます。

2015年記録 参考

2014年度記録 参考

次週ゲストエスキース

次回 4月22日13:00~のエスキースには、新井崇俊さんをゲストにお呼びします。

新井崇俊 (Takatoshi ARAI)

京都大学工学部建築学科卒.東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了.
博士(工学).東京大学生産技術研究所特任助教.
hclab. コアメンバー.

 

表記ビジュアライズ参考書

地図 視点とデザイン / スーザン・サウスワース + マイケル・サウスワース

『10+1』 NO.3 特集=ノーテーション/カルトグラフィ

時間のヒダ、空間のシワ…[時間地図]の試み: 杉浦康平のダイアグラム・コレクション

インフォグラフィックスの潮流 情報と図解の近代史

現代建築家コンセプト・シリーズ9 ダブルネガティヴス アーキテクチャー ――塵の眼、塵の建築

すべて芸大建築科図書館にあると思います。

 

KAJIMAダイジェスト 2015 連載「都市をはかる」

第4回 圏域をはかる

第3回 公平性をはかる

第2回 交通をはかる

第1回 距離をはかる

 

次回4月22日(水)までのTODOとエスキース・メモ

次回まで:

  • 各自ピックアップした2つの場所について、具体的な指標を決めて、計測などをおこないデータ採取をしておくこと。各自の場所比較指標についてはエスキース時に話し合った内容を基に。
  • ビジュアライズのアイディアなども検討をすすめておくこと。

以下メモ(エスキース順):

  • 公園の第一印象としての迷路感。それが変化していく。記憶、認識のある場所←→アイソレートされた場所。主要施設、印象に残る施設(ランドマークや公園設備も含めて)までの距離(一般的に多用されると観察できる公園内路を経由した)の合計を比較してみては?場所に立った際の、視野内の建物の割合など。公園内施設と場所が、記憶として結びつく要因となる公園の構造が抜き出せれば。
  • 若葉が美しく、自然のみずみずしさ、公園内にある文化施設と直接関連がなくとも、知的な印象を受ける。植生の偏り、道の曲がり度合いなど、「違い」の要因となる色々な変数に気づき、見つけられたことは良い。歩行路面と植栽部分の高低差、最高部と歩道の距離の関係、築山の影響、など構造を少ない指標で定量的に測れるとよいかも。また2つのフレームの大きさを変えていることも面白い要素になりえそう。
  • 独自に定義した「空間」という単位で、空中の3次元ポイントにある何らかのスカラー値を、グリッド状に計測しその微差をとらえてマップする。光を測る(あるいは光に相関する明るさなど)単位はあるものの(lm・s、lm、cd、cd/m2、lx、rlx、lm/W)、それぞれ何に使うかという目的のある単位であるから、今回の指標にフィットするかどうかはわからない。露出計のようなもので、計測の方法やルールを作ってそのルールに従って2つの場所を計測してみる、という感じ?計測時の誤差やノイズは、計測回数で馴らす?そこまで微差がとれるか。
  • 木に囲まれた歩道の比較。アイレベルでの水平断面をあるい程度詳細に記述してみる。断面群の密度や断面同士の距離関係をネットワークのように表現してみると、2場所の違いが表現できるかもしれない。
  • 上野動物園、入口と出口の違い。出入りという意味の違い、明るさの違い、人の声、カラスの鳴き声、など違いの因となる要素はたくさんありそうだが、すくない指標で一元的にはかれるのもひとつ目指したいところ。ピックアップした場所のフレームの外のことを計測・記述してみるのもありかもしれない。入り口として認識される最遠距離、出口として認識される最遠距離と方角などでみることはできないか。
  • 似ている構造の場所(ブリッジの下)を選んでいるのは、むしろその違いを示すのに良い切り口といえそう。超ロング断面図をまず記述してみて、そこから距離、長さの比など、構造的な違いを拾えそう。
  • 一本道の色彩の比較。通りの立面写真をうまく連続するように撮影し、それを短冊状に分割。分割範囲で印象のある(印象の強い?、選び方はある程度ルールを)色を抜き出し→代表色を決める。その代表色がどのように連続しているかを、2つの一本道の比較の指標とする。
  • ベンチに座った目線での場所性。ベンチのリッチさを測れる?ベンチの幅でその前の空間の大きさ、対面の寿樹の見上げ高さ、角度、と直上の木の被覆感、などを定量的に測る。
  • 中央の桜並木の両端を2箇所。路面と枝の張り出し度合いを細かく計測記述して、アーチ上の通過空間の構造を測れそう?2場所でありながら、グラデーションが予測される?
  • 視野内の焦点のあっている部分とそうでない部分。あっていない部分の方がその場をうまくリフレクトしているのではないか(無意識的認識?)JR上野駅入口、京成駅入口。パノラマ写真において、アイレベルは認識がはっきりしていそうだから、その水平レベル付近を抜いたパノラマ写真を作ってみる。そこに占められている対象の割合などで、場所が映せるかも?
  • 透明度、電話ボックス。都立美術館のエントランスから等距離の場所、平面形状が同じ(ミラー)を選び、そこから違いの指標を探す。公園利用者、芸大生にとって経験的に性質の差が鮮明なので、視点を変えて、時代的にも特殊な位置づけとなってきた電話ボックスを指標作りのヒントにしてみては?
  • JR上野駅公園口、動物園入口前、待合、子供の割合、場で起こるイベントによって場所をはかり、比較。JR口と動物園口の違いが大きいので、もうすこし小さい範囲の微差を測ってみては?待合せというイベントに特に絞ることでも、何か見出せるかも?
  • 樹木が連続している空間、歩道空間だが性質が異なるように見える。人の通過行動の観察から、人工的に整備された路面からのそれて通る度合い、それる角度、歩道の方向と人の歩行方向との差、などで測れないか?公園の路面の構造と歩行イベントを合わせて視る。
  • 桜通り、アジサイ遊歩道。植栽の演出されている両歩道の性質の違い。人のクラスター度(グループ化、団体傾向)で場所の違いをはかれないか。
  • 公園への17箇所のエントランスから2箇所を選ぶ。公園内外をつなぐ地点を選んでいるのは面白いかもしれない。そのポイントを都市機能のノード(交通の結節点)として考えて、そのノードの持っている色々なポテンシャル(潜在力)を測れないだろうか?